おはようございます、お兄ちゃん♥

あのね、ホタお願いがあるの。
あのね。

あの――

今日は特別の日だから――

学校が終わったら、
なるべく早く――
帰ってきてほしいなって――。

お願い――してもいいですか？

――嬉しい♥
本当にどうもありがとう！

本当はこのままずっとお兄ちゃんと一緒にいたいけど――

それでは、ホタもこれから学校に
行ってまいります――

いやーん、
うわぁお――、
どうしよぉ――！

学校チコクしちゃうよぉ～！
いそげっ――
いそげっ――

えーん――
きのう、夜遅くまで
ラッピングのリボンがんばって作ってたから――

うぅん――
でも、リカ、こんなことで負けない！
リッカの辞書には後悔の文字はないのだ!!

リカががんばったおかげで、リボンすごいキラキラで
ちょーキレーだったし♥

きっと、おにいちゃん、めちゃよろこぶよ～♥
きゃ――、もう想像しただけで、なんかヤバいっ!!

って――
あ――ゲッ、ヤバいっ！
もうこんな時間――
まずーい！
うっ、
こんな時に限って
スカートのベルトが引っかかって――

うわーん！
おにーちゃーん！
たーすーけーてー♥

時計の短い針が９を回って――

みんなが幼稚園や学校に行ってしまいました。

残っているのは――
まだ幼稚園に入っていない小さな子たちと――
今日は学校をお休みした私――ユキだけです。

おうちの中には静かな時間が流れています。

昨日から少しだけお熱があって――
今日はお休みすることになりました。

あ、でも――心配しないでください。
お熱があるっていってもほんのちょっぴりなの。

きっと昨日ちょっとはしゃいで――
がんばりすぎちゃっただけなんです。
だって、初めてなんだもの。
19人の姉妹みんなで
バレンタインの――

あっ。

いけない。
これって内緒なんでした！

うふふ――

姉妹みんなで計画した、
とっても楽しい素敵な秘密♥

学校を休むのは悲しいしつまらないけれど――
今日は、なんだかわくわくした気持ちです！

だってこれからとっても素敵なことが起こるから。

私たちの気持ちが――
お兄ちゃんに伝わるといいな♥

にじこは、
お絵かきとってもじょうずなの！

おひめさまとおうじさまの絵がかけるよ♥

いっつもおひるごはんの前は、
お絵かきしてあそぶの！

フレディがいっしょにお絵かきするときもあるのよ。
フレディもね、お絵かきじょうずなんだから！

おはなを使って上手にかくの。

にじこの好きな色はピンク。
フレディの好きな色はきいろよ♥

お兄ちゃんは？
お兄ちゃんの好きな色は――なんですか？

やっぱり――男の子の色？
青とか、みどりとか。

でも――
ハートはやっぱりピンクだよね？

ね？
ね？
ね？？

だって――
にじこピンクのハート、
もうかいちゃった――。

にじこ、ウェディングドレスはピンクがいいな♥

きょうのおひるごはんは
ちゅるちゅるなの。

そらのだいすきなちゅるちゅる！
きのこのちゅるちゅるだよ！
おにくもはいってる。

とってもおいしいよ。

おにいちゃんもたべたらいいのにね♥

いっしょにたべられなくてかわいそう――

でも、いいね♥
きょうはよるにみんなでぱーてぃー。
ちょこのぱーてぃーだよ

おにいちゃんはちょこすき？

そらはちょこだーいすき！

おにいちゃんにそらのちょこ１つあげるんだ！
きのうからずーっとおててにもってるよ♥

今日は――
寒いの。

ガタガタと――
歯が鳴るような
寒気がする。

いや――気にするな。
いつものことじゃ。

この日は――な。

世間では愛の告白の日などと申すがの――
この日は生き霊が多く飛び交うのじゃ。

ああ――六根清浄。

ほれ、このように――
キュウビも形相が変わっておる。
こんな時にはとって食われぬように気をつけなくてはならぬ。
今日は食欲もわかぬわ――そちは大丈夫か？

ふむ――。
我が眷属とはいえ、そこは丈夫なようじゃの。
鈍くて良かったな♥

今夜は――
わらわの分のチョコはすべてそちにやる。
食うてくれるか？

わらわから愛の贈り物じゃ――ふふ♥

ただいまかえりました！

うわーん、今日はおそとがとっても寒かったです――

今日はさくらは幼稚園のお当番の日だったの。

みんなのまえで――
「いただきます」のごあいさつと
「ごちそうさま」のごあいさつするの。

とってもとっても恥ずかしくて、ドキドキしたけど――
なんとかがんばりました！

ギュウニュウもちゃーんとこぼさないで運べたよ！

だってね――
ちゃーんとがんばってお当番したら、
お兄ちゃんが

「いい子だったね」

って言ってくれるかなって――
思ったんだもん♥

さくらがいい子にしてたら、
お兄ちゃん、またさくらと一緒におふろに入ってくれるかな？

ねぇ、お兄ちゃん――
誰にもナイショにしてね？

昨日の夜――
おふろも歯みがきもすんだ後だったのに――
さくら、みんなで作ったチョコ、ひとつだけ
食べちゃったの……

そしたら、あちこちチョコだらけになっちゃって――
うわーん――
まだおからだからチョコのにおいがするよぅ……

たっだいま――！

あーあ、今日は疲れちゃった！
幼稚園が――ホントにそうぞうしかったんだもの。

みんな、お子様であっきれちゃうわ～。
ちっちゃなテントウ虫チョコの交換してたり――
お教室にチョコボールばらまいて泣いちゃってたり。

マリーにチョコくれ――なんて言ってくる男の子もいるし。

ねぇ、フェルゼンたら知ってる？
そ、う、い、う、の、を――

みのほどしらず――

って言うのよね？

うふふ――マリーが愛しいフェルゼン以外に
あげるチョコなんてこの世にあるわけないでしょ？

だいたいねー、バレンタインのチョコは本当の愛の証なのよ？
本物の本物の本物よ？

だから――
本当に大事な人以外にあげたりなんかしちゃだめなのよ！

春風お姉ちゃんが言ってたもの。

私たちの愛はこのお家の中いっぱいにあふれてて――
家族よりも大切なものなんてこの世にないのよ♥

って――。

ねぇ、私のフェルゼン。
マリーの作ったチョコレート――
どれか当ててくれなかったら
おしおきよ？

今日はバレンタインデー♥

あっ――これって秘密なんだった――
けど――。

もう、いいよね？

だって、もう学校終わって帰ってきたし、
もうすぐお兄ちゃんも帰ってくるし！
帰ってきてくれたら、みんなでパーティーするんだし♥

えへへへ――楽しみだなぁ！
みんなで初めてのバレンタインパーティー!!
星花は、手作りチョコって生まれて初めて作ったの。

本当は星花のかっこいいお兄ちゃんに似合うような、
うーんとかっこいい名馬の形のチョコを作ろうと思ったんだけど――
あんまりうまくいかなくて――へへ♥

結局おダンゴの形になっちゃった♥

でも、蛍お姉ちゃんが
「星花ちゃんの頭のおダンゴに似てて素敵よ」
って言ってくれたから――

そっかぁ♥ 　

と思って――
星花とおそろいの赤いリボンをつけました♥

いつかお兄ちゃんと四川省に行けるようにとの願いを込めて♥

お兄ちゃ～ん、早く帰ってきてねー♥
今晩のメニューはチョコフォンデュだよ～！

昨日から寒い日が続いていて――
私はとても過ごしやすく、
気分がよいです。

なので――。
少し。
挑戦してみました。

私も。
手作りチョコレートというものに。

これまで、
チョコレートというものに興味を持ったことはありませんでした。

チョコレートは融けますから。
温度変化に弱いものを見ているのは総じて苦手です。

とくに――
温めると融けるものは。
何か熱を感じさせるので。

けれど――家族の皆がバレンタインという話で大変に盛り上がっていて。
普段なら――
そんな熱気には近寄りがたく、避けているのが通例なのですが。

なぜか――。

寒い日が続いているせいでしょうか？
今回は――なぜか。
気分が良くて。
参加してみたく思ったので。
春風姉や蛍姉に教えてもらいながら――
作ってみたのです。

そこで――
クーベルチュールチョコレートをテンパリングしているうちに、
おもしろいことがわかりました。

どうやら――
私の体は、
チョコレートに含まれるカカオバターのβ型結晶の融点である
34～36度に到達した物体に触れると――
めまいを起こすらしいのです。

おもしろいですね。
このようにはっきりと限界温度が定まっていたとは――。

おかげでとても楽しい１日になりました。
私の作品を――
ぜひ賞味してみてください。

途中でめまいは起こしましたが――
テンパリングは完全です。

おっにいちゃん――
はーやく、かえって
こーないかなー♪

えへへ――今日はねー
おにいちゃんを、

ま・ち・ぶ・せ
攻撃～！

なぁんだっ♥

だってさ――
今日はバレンタインデーでしょ？

お兄ちゃんに夕凪のとっておきの魔法をかけなきゃ――♥

夕凪のおまじないは、
誰にも見られないようにして――
１対１の２人っきりでかけなくちゃ、
うまくいかないんだもん！

おうちに帰ってくるお兄ちゃんを
姉妹のだれよりもはやくキャッチして――

おでこにちゅ！
くるくるまわって、おしりをピョンッ！

次のバレンタインもずーっと一緒にいられるおまじない――

はっぴーらっきーはねむーん♥
ゆうなのちっちゃなすぱいだー
おにいちゃんのはーとをひとりじめ～！

……あっ！
誰か来た！

お兄ちゃんかな？

うっわぁーい、
おにーちゃーん♥
待ってたよぉ―――!!
今日は、夕凪が1番乗りだ～♥ ♥ ♥

あぁ――
ビックリした…

学校から帰ってきたら、いきなり夕凪が飛びついてきて――

ホント、危なかった。
オマエがすぐ後ろに帰ってきてたなんて気がつかなくて――。

危うく――
“ハートを独り占め”にされるところだったよ――

ふふ――♥
夕凪、かわいいよな。

オマエのこと、ホント、好きなんだな。
ウチの妹たち――特にちっちゃい子たちは、
みんなオマエが来てすごく喜んでる。

このウチには今まで――男がいなかったから。
初めての“お兄ちゃん”だもんな。

……。

これ、全部、オマエにやるよ。
ちょっと多いから――少しづつ食べろよ？
数えてないけど、紙袋いっぱいになっちゃったから、
たぶん――全部で30個はあるかなぁ……。

ん？
学校でもらったんだ。
チョコレート。

毎年もらうんだ。
私は男じゃないって言ってるんだけど。
でも、断っても勝手に机の中やら下駄箱の中やらに入れてあったりするから――
もう、もらっちゃうことにした。

いつもは、妹たちみんなに分けるんだけど――。

みんな、私がもらってくるのをすごい楽しみに待ってるんだ。
みんなチョコ好きだからな。
だからさっきも夕凪がチョコ目当てに待ってたのかと思って――

……うん。
でも――
今年は――な。

みんな作る方ですごく楽しんでるしな。
女の子だもん、もらうより――
作る方がいいに決まってるよな。

うん。

だから――これ、オマエにやるよ。
私も――昨日チョコ作って、少し楽しかったから――

だから――そのお礼。

鼻血出すなよ？

 

トントントン――

あ、あの、お兄ちゃん――
いいですか？

そろそろ――
晩御飯のお時間なので、
小雨が呼びに来ました。

まだ麗ちゃんが帰ってきてなくて――
心配なのですけど――

もう、あさひちゃんがちょっぴり
おねむさんになってきてしまったみたいなので――
先に始めるそうです。

きっと麗ちゃんはどこかで
電車に見とれてしまっているのかもしれません……
あと３０分しても帰ってこなかったら、
ヒカルお姉ちゃんが探しに行くと言ってました。

今日は特別の日なので――
みんなで乾杯だけはしたかったのですけど――

……ええ、
もちろん今日は特別のパーティーです！
お兄ちゃんと会って初めての今日この日

あの――
みんなでお兄ちゃんをお祝いっていうか――
歓迎っていうか――♥
告白っていうか――♥ ♥

あの――♥ ♥ ♥

――きゃっ！
うわっ、だ、誰かぶつか――

あ！
麗ちゃん!?

はぁ――

ただいま帰りました――

遅くなってごめんなさい。

ちょっと探し物をしてて――。

――うん、わかってるってば。

今日は、
“初めてのバレンタイン記念
チョコフォンデュパーティー”
……をやるんでしょ？

家族のイベントはちゃんと参加しますって――

それに昨日だってちゃーんとつきあって、プレゼントのチョコも作ったじゃない。
１人１個必ず作って箱に入れるんだからって、春風ちゃんに念押しされたし。

リッカは太すぎるって大笑いしてたけど、あれはちゃんと線路のマクラギの形の――

……もう、いいもん。
私――家庭科は苦手なの！

ああいう手作りとかは得意な子だけがやればいいのに――

……。

ねぇ。

あなたよ、あなた！

今、私の正面にいる、あ・な・た！

そういうわけだから――。

私のチョコは食べない方がいいわよ。
きっとおいしくないから。

だから――
代わりにこれ。

今日買ってきたの。
電車マーブルチョコ。
私、昔から好きだったの。

あなたに――あげる。

ホワイトデーのお返しは
トレインくんのクッキーでいいわ♥

ちょ、ちょっと――
な、なんで私が――

乾杯をやらなきゃいけないわけ!?
そういうのはユキとかもっと普段引っ込んでる子が――

うわっ、あっ、ちょっ――泣かないで、ユキ――

わかったわよ――じゃあ、仕方ないから――
はい。

みんな、準備はいい？
ほら、みんな――グラスを持って

私たちの新しい下僕に――

……

わかってる、ちょっと言ってみただけじゃない！
ジョーダンよ。
そんな目で見ないでよ、ホタってば――

――えへん。

じゃあ、もう１度。

私たちの、お―――
お―――

オニイチャンと初めてのバレンタインデーと――
楽しいパーティーに――

かんぱーい！

はい。
あげる。

昨日からみんなで――作ったプレゼント。
チョコレート19個詰め合わせ。
私は――ともかくとして、
みんなの愛が詰まってるんだから、心して食べてよね！

ほら、見て――

１人１つずつ、ぜーんぶ自作。
本当にみんな――ちっちゃい子たちまで一生懸命作ったんだから。
あなたのためにって。
すごいでしょ？
感動した？

ふふふ――泣いちゃってもいいわよ♥
見苦しいから今日は特別に拭いてあげる。

私の作ったのはね――
この端っこの――

あああっ!!!

私の作ったチョコがない―――

今日は――疲れたな。

オマエも大変だったろう？
お疲れ様。

みんな――ちょっと興奮気味だったからな。

ああ――
もうみんな風呂はすませたようだ。

私が最後だから――
オマエも早く風呂でも入るといい。

氷柱が驚いて皿をひっくり返したし、
さくらも泣いてまた顔中チョコだらけになったし、
虹子や青空もずいぶん、まき散らしていたから――
まだあちこちチョコレートくさい気がする。

それにしても――
さくらが昨日の夜につまみぐいしてたなんて――
気がつかなかったな。
意外に――チョコ好きなんだな。

大丈夫。
氷柱は――わかっているから。
さくらがわざとやったわけじゃない。
オマエにあげる分だとは知らないで食べただけだ。

昨夜は――
慣れない手つきで一生懸命に作っていたからな。
鋭く尖った三角錐の――
つららの形のチョコレートを――。

だから、あんなにあわてて――

フフ――いじらしいな。

そうだ。

オマエ――
チョコレートは油だから、
石鹸でよく洗わないと落ちないぞ？

ほら、首筋にまで点々と――
チョコレートのしずくが飛んでいる。

なんだったら、私が一緒に行って――洗ってやろうか？

フフ――。

気にするな。
私たちは同じ宇宙の塵になる姉弟なのだから。

ｋｎｏｃｋ　ｋｎｏｃｋ――

まだ――起きてた？

良かった♥
ちょっと入ってもいいかしら？

うふふ――♥

うぅん――なんでもないの。
ただ――

ありがとうって。

言いに来ただけよ♥

今日は、私たちと一緒にバレンタインしてくれて
本当に本当に――
ありがとう――って――

そう伝えたかっただけ。

みんなとっても喜んでたし、とっても幸せそうだった――
きっと、今日私たち姉妹は世界一幸せな女の子だわ。

本当にありがとう。

ね――ちょっとだけ。
手を握ってもいい？

うふふ――
理由なんてないわ。
なんだかそうしたくなっただけよ――

わ♥
意外と――大きな手ね。

あなたがまだ小さいウチに出会えていたら――
私たち、一緒に育っていたら――
きっと、もっとこんな風に――
ぎゅう――って、
いっぱい手を握りあって育ったかもしれないね。

うん。
でも――
今からでも遅くないよ♥

私はあなたのお姉ちゃんなんだから――
もっともっと甘えていいんだからね？

いい――約束よ？
これからもずっとずっと――
私たちは家族なんだから。
変な遠慮はしないこと！

指切り。
ね――？

くす――♥
これはあなたと私の２人だけの秘密よ。

じゃ――
Ｇｏｏｄ　ｎｉｇｈｔ――

チュッ！