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名前: mizore
2008年3月28日 (金)
夜桜

夜更けの桜というものは――
美しいものだ。

宇宙の美を感じさせる。

ただこの宇宙に存在する唯一の真実の美。

崩壊の美を――。

今、

この空の天辺の遙かな高みから――

この小さな花びらになって舞い落ちているのは、
私たちの運命の欠片。

音もなく――舞い散るのは私たちの未来と運命。

ともに終末を迎えるはずの――。

静かに、

声もなく――

この宇宙のどこかで崩壊は始まっているのだ。

ああ、この快感――。

満開の美をただ一瞬だけ――
この夜空の虚空に止めて。

あとはただ――
ひたすらに散りゆく桜を眺めていると。

どうしようもない寂寥感が私の体を満たし――

この花冷えの空気の中で、
私はあらがいようもなく――
高揚し、上気し――

そして達する。

逃れようもない絶頂へと――。

……

オマエも一緒に――
行ってみないか?

明日は休日だ。

少しくらい――遅くなったっていいだろう。

あの快感を――オマエにも味わわせてやりたい。

そうだ、ありがたい姉心だ。

ほら、私の手を取るがいい。

これから一緒に――
夜桜を見よう。