昨日はそちも大変であったの。
虹子が「ゾウが逃げた」と大騒ぎをしていたから――
落ち着かなかったであろ。
結局あのまま――
そちのヒザの上で泣き寝入りしてしもうたの。
小さなほっぺたが涙の跡でカピカピになって――
かわいらしかったけれど――
なにやら、かわいそうじゃったの。
よほどあの――フレディとやら申すじゅうのことが
好きなのじゃな。
大丈夫じゃ!
あんなに心配しなくてもそのうち戻ってくるであろ。
そもそもけものは家につくというしの――
ほれ、今わらわの前にいるそちのように、な。
フフ――。
そちとて――
もうこの家からは離れられまい?
そもそも、ここ――
わらわのそばがそちの本当の居場所なのじゃからの。
たとえ迷子になってもきっとすぐに――
ここに戻ってきてしまうであろ。
――うむ。
下等な物の怪でもな、
一宿一飯の恩義は忘れぬものじゃ。
それに――さっそく
蛍姉じゃ考案の立派な罠も庭に仕掛けたしの。
そなたは――知っておるか?
蛍姉じゃはこういうとき、とても頼りになるのじゃ。
だから昨日も、虹子が騒ぎ出したときに
蛍姉じゃにわらわが――頼みに行ったのじゃ。
台所で夕餉の支度をしていた姉じゃは
しばし不思議そうな顔で思案しておったようじゃがの――
やがて楽しそうに笑って――わらわの頭をなでてくれての、
快くフレディの捕物計画をたててくれたのじゃ。
昨日は虹子が泣いてばかりいたから、
そちには話していないようじゃが――
蛍姉じゃの計画はこうじゃ。
まず、庭に古い大きな蚊帳を吊る。
それから――
中にフレディが寄ってくるような、
虹子の大切なものを入れておく。
すると――
しばしののち、フレディが蚊帳の中に入って出られなくなる、
とこういう寸法じゃ。
きっとなかなかの見物じゃ。
あとでともに見物に行こうぞ!
楽しみじゃ――