昨日から、本当に――
よく降る雨だな。
春なのに外に出られなくて――つまらなくて困るよ。
たまに、雷が鳴ったりすると――
小さな子たちはおびえているみたいだし。
ゆうべも――
けっこうな夜更けに
虹子やさくらやマリーが連れ立ってかけてきて――。
部屋のドアを開けるやいなや、
泣きながら私のベッドに潜り込んできたんだ。
こっちがびっくりするほど、ひどく泣きべそをかいてて――
顔中涙だらけ。
ただの雷なのに。
あんなに泣くことないのに――
な。
オマエもそう思うだろ?
さくらなんて小さなパンダみたいに丸まって
私の体にぴったりくっついて、ブルブルブルブルって――
ウフフ♥
どうにもかわいらしくて――
笑ってしまうのをこらえるのが大変だった。
でも、こんなことがあると、
思い出すな。
まだ――私が、
さくらやマリーくらい小さかった頃のこと。
あの頃、私は春風と蛍と同室で――
蛍は小さな頃からのんきな子で意外と動じないのに――
春風はもう、今のさくらなんかと比べても、
あきれるくらいの怖がりで――
なにかというとすぐにべそべそ泣いてた。
なんていうか、すごく――
――かわいかったよ。
1つ年上のお姉さんのはずなのに、
なんか頼りなくってさ。
だから雷なんて鳴ると――もう大変なんだ。
パジャマの上にお気に入りのピンクのガウンをしっかり着てさ、
いつでも逃げ出せるようにって――
大切なぬいぐるみを抱えながら、
隣のベッドの私と蛍の手をしっかり握って寝ていたな。
でも、結局恐くてなかなか眠れなくて――
「ヒカルちゃん! 蛍ちゃん!
大丈夫よ、春風がついてるからね!
これから――
みはるお姉ちゃまたちのところにヒナンしましょっ!」
って――。
そう言ってぐいぐい私を引っ張る春風の手の方が
こわさにブルブル震えてて――
結局みんな――海晴姉と霙姉と春風と蛍と――
くっついていっしょに眠ったっけ。
小さな狭い子供用のベッドに5人も入って
ぎゅう詰めになってさ――
氷柱はまだまだちっちゃな赤ちゃんだった。
あれから――もう10年以上もたつんだな。
春の雷の夜に生まれた立夏の誕生日。
春雷を聞いて――もうすぐ夏だと思った私たちも、
ずいぶん小さな子供だったな――
立夏、お誕生日おめでとう。
今年は――優しいお兄ちゃんが一緒で、良かったな。