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名前: mizore
2008年7月11日 (金)
裏山にて

私は今――
どこにいるのだろうか?

帰宅途中からの記憶が、
なぜか――

ぼんやりとどこかへ抜き去られてしまったかのように――

遠い気がする。

……

気がつけば。

この暑さなのに――
腰を下ろした草の上に広がった
制服のスカートはなぜかじっとりと湿っている。
いったいどれほどの時間が経過したのか――

謎だ。

大いなる虚無。

ああ――
ここにこうしている私は
果たして本当に私なのだろうか?

家に帰れず疲れているはずなのに、
意識は冴え、五感がひりひりと周囲を知覚する。

これは――いよいよその時が来たのだろうか。

こうして目をつぶっていると――
このむせ返るような周囲の緑と濃密な湿気に――
この肌が溶けてゆきそうな気がする。

そして私の体は透明な水のように
透き通った液体となり、
この湿度100%の大気と同化して――

空を翔る。

無限の空間の中のたった1つの儚い塵となるために。

それは小さな一粒の白い砂くず。

そう、目指すのは――
海のさざなみ、
白砂の浜を踏む小さなヤドカリ、
そしてかすかな潮の香り――

……

家族と離れて――
こんな風に1人でいると、なぜか不思議と――
心は澄んでくるものだな。

思い出すのは
オマエや家族と過ごした――楽しかったあの海の記憶。

このまま、私はここで朽ちるのだろうか。
永遠にともに過ごそうと願った私の愛しい家族たち――
さようなら、私は一足先に塵となって無に還ろう。

もう体が動かない――

どこからか――
空耳が聞こえる。

私をさがす――小さな者たちの声と
少しだけ低く響くのは――オマエの声か。
甘く響いて――私の心をかき乱す。

やはり幻だろうか?

ああ、引き戻される――