昨日は――
取り乱して悪かったわね。
日記が短いと姉様達に怒られるし――
そんなつもりはなかったんだけど。
ただ、あんまりショックで。
どうしようもなかったの。
だって――。
夢だったんだもの。
ずっとずっと――
長い間、夢だったの。
私の――青春18きっぷ。
ちっちゃい頃は――
18歳にならないと使えないんだって思ってた。
すごーくオトナの匂いのする切符。
フフ――バカね、私。
本当はただの格安乗り放題チケットなんだけど――
でも、今でも。
やっぱり私には特別な響きするの言葉だわ。
どこまででも――好きなだけ遠くへ鉄道に乗っていける切符が
この世にあるって、初めて聞いた時。
なかなか信じられなくて。
それは魔法だって――そう思ったもの。
いつまでもいつまでも――
電車に乗っていられる夢のような切符。
今では――コドモだって使えるって事も知ってるけど、
でも――やっぱりオトナと一緒の1万円を超える料金は
今の私には出せないし、まして5日間も――
自分の好き勝手に鉄道旅をする事が出来るなんて、ありえないもの。
だから、思ってた。
ずっとずっと。
18歳になったら――
高校を卒業したら。
家族に一生のお願いをして。
5日間の卒業旅行を許してもらうんだって。
青春18きっぷを手に入れてから――最初に使うのは
ながらの指定券と450円のただの横浜行きの切符。
11時過ぎに東京駅を出るムーンライトながらに乗り込んで、
ドキドキワクワク――
時計の針が、夜中の零時をすぎたら――
いよいよ――憧れの青春18きっぷの出番。
これからまるまる5日間、ずーっと乗り続けていたい、
私の鉄道旅――。
大垣夜行――。
私の憧れの電車。
心地いい夜行の音に揺られながら私は、
真っ暗な空に輝く月と星と銀色のレールと――
切ない音を立てて行き過ぎる踏切とを眺めて、
初めての一夜を過ごすんだって――そう思ってた。
それが私の成人式になるはずだったのに――。
悪い予感は去年からしてたの。
3月のダイヤ改正で、日付変更駅が小田原になって――
銀河やあかつきが廃止になって――
昨日は、まりもだってラストラン。
……
0系の引退のニュースもあったばっかりなのに。
こんなのって悲しすぎる。
夏の18きっぷのシーズンは来週の10日まで。
ながらの最後の夏、せめて
見に行きたいな……