ふむふむ――
やっ!
ややややっ!!
ここだ!
ここを――
見てみたまえ、
ワトソン君。
このバスルーム南側の壁面にある腰高の小窓――
ほんの少し、1センチほどの隙間が空いている。
この小窓が事件発生現場だ。
おそらく――
被害者・蛍は驚愕のあまり――
きちんと窓を閉めずに逃げ出してしまったらしいな。
ふーむ、いかんいかん。
鍵も閉まってないし――
うん、これは私が閉めておかなきゃ!
シメシメ、と――
――ん?
何をぼんやりしているのかね?
私の下僕は――相変わらず
指示待ちの下僕グセがぬけないのだな?
せっかく下僕から助手に昇格するチャンスだったというのに。
そんな風にぼーっとしてたら、
せっかくの――せっかくの――
シャーロックホームズごっこがつまらないじゃないのぉっ!
……
バカ、そんな顔しないでよ!
ちょっと遊んでみただけでしょ?
わかってないわね――
こういう時はね、クールダウンして物事を少し客観的に見る必要があるのよ。
鍵はもともと開いてたのか、
のぞかれた当時窓の隙間はどの程度だったのか――
のぞかれた当のホタ姉様はひどく動転してたに違いないもの。
まずは事実を確認して、物事を整理して考えなくちゃ――ね。
想像もしたくないけど――
やっぱり犯人はこの近くに住んでるヘンタイかしら?
もう――ホタ姉様のあの清らかな体が――
そのへんのくだらないオトコ達にのぞかれるなんて、
そんなの絶対ありえないっ!!
それもよりによってユキのお誕生日に――
ユキが1年で1番幸せなはずの日に――
パーティーはもう終わってたからいいようなものの、
あの子は優しいから、みんなの心配ばっかりして
せっかくのお誕生日が台無しよ!
私――絶対に犯人を許さない!!
絶対に――この手で犯人を捕まえて、
もう2度とこの家に近づく気なんて起きないようにしてやるんだから!
ふふふ――♥
もちろん、そのための手は考えてあるわ。
そのために――
下僕――じゃなかった!
私のかわいいワトソン君を呼んだんじゃないの♥
いいこと――犯人は必ず現場に戻る。
昨日の今日だから、今夜は無いかも知れないけど、
絶対にまたやってくるわ!
そこに――罠を仕掛けて一気に捕獲よ!
でも――こんなこと妹たちに言ったら大騒ぎになって、
犯人に感づかれかねないし、
姉様達に言ったら危ないって絶対に止められるもの。
だから――このことはみんなには秘密よ。
今晩は誰にも内緒で2人で張り込みするの。
アナタと私だけで――絶対に捕まえてみせる!
大丈夫、アナタが寝そうになったら――
私がつねって起こしてあげるわ♥