やあ、もうずいぶん――
桜の花がほころびはじめたのう。我が家の裏山に1本だけある桜の古木も――だいぶん花が目立ち始めたようじゃ。
兄じゃは――知っておられるか?
桜の下には――
しかばねが埋まっておる、と――
古くからよく言うらしいがの。
……フフフ♥
我が家ではもちろん――
そんなことはないぞ。
この季節。桜の下には――おのがかばねを探して歩く死霊の姿などはなく――
春の宵闇にうすくもも色に浮かび上がるのは――芳醇な春の空気に浮かれて酒宴をはる、小さなモノノケどものふわふわと酔ったようなあり様だけじゃ。
なかなか――かわゆらしいものぞ♥
わらわのともをしてくれておるキュウビも――この季節にはソワソワとしてそんな酒盛りに参加したくなるらしいがの。
わらわは夕べ。みてしまったのじゃ。裏山にある桜の木の下で――なにやらうごめく2つの重なった大きなモノノケの黒い影を――。
あのような得体の知れないモノがいたのでは、キュウビを連れて行ってやるわけには行かぬかもしれぬ。
桜の季節は何が起こるかわからぬ、逢魔の季節でもあるのじゃ。兄じゃも気をつけなされよ――