今日のオヤツは――
カリッといい匂い。
金色に焼けたピッカピカの――
マドレーヌ。
あーあ。
どうせ、マドレーヌを作るのなら――
材料はほとんど変わらないんだし、
マリーの好きなクグロフにしてくれたって
良かったのに。
――と、思ったけど。
でも。
マリーはそんなこと、
言わない、
――の。
だって――
作ってくれた人に悪いじゃない?
ええ、そうよ♥
およそ――人の上に立つモノは。
どちらでもいいようなことで、
人を責めてはいけないのです――って。
この前、園長先生がマリーにだけ
特別に教えてくれたんだもの♥
クグロフだってマドレーヌだって
春風お姉ちゃまや蛍お姉ちゃまが作ってくれた
おいしいオヤツには違いがないんだし――
ウフフッ♥
マリーってば、レディでしょう?
オヤツを見ながら思い出したの。
そういえば、マドレーヌのご本にも――
「いつもおぎょうぎよくいるために」
世界中の女の子にとって大切な、
いろんなことが書いてあったなって。
あれはマリーの大好きな本よ。
女王陛下にお茶に招かれたときの正しい挨拶の仕方、とか。
だれかをいじめるのなんてほんとにかっこわるくて、
ぜんぜんおもしろくなくて、ザンコクなこと、とか。
いろんな正しい決まりが書いてあるの。
幼稚園では教えてもらえないような、
本当のフランスの貴婦人になるための決まりが、ね。
そう。あとは、どんなおくりものだって、
それがたとえあんまりほしくなかったものでも、
すでに七つも持っているモノでも、
必ずお礼を言うこと、とか――。
マリーはこれからどんどん大きくなって――
世界一正しいレディ・マリーになるの♥
フェルゼンも、もちろん――
気高い女性が好きでしょう?
フフフ――よくてよ、
楽しみにしていて♥
マリーの世界一気高い魂は、
永遠に私のフェルゼンのものなんだから――