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名前: wata
2009年10月28日 (水)
お兄ちゃん――

どうしよう――

どうしようどうしよう
どうしよう――

お兄ちゃん、ユキ――
どうしたらいいの?

氷柱お姉ちゃんが――

帰ってこないの。

……

氷柱お姉ちゃん、
ユキのこと――
置いて行っちゃった……

どうしよう――

ユキ、こんなこと、
初めてで――
ユキ――

ぅぅ――

……

グスッ。

ご、ごめんなさい、ユキ――

どんな時だって、
泣いたりしたら――いけないのに。

泣いたら不幸がやってくるのに。

でも――でもね、
いつも――

夜になると
ユキが眠る前には、
トントントンって
小さなノックの音がして――

細く開いたドアの影から
小さく――でもとっても優しく
笑った氷柱お姉ちゃんの
お顔がのぞいてて――

「ユキ、調子、大丈夫?」
って、いつも
たたそれだけ――

ただ、それだけの――
ほんとうにちょっとした
夜のご挨拶だったのだけれど、

でも――いつも毎晩そんなコトしに
来てくれるのは氷柱お姉ちゃんだけで――。

ユキが「大丈夫、元気だよ!」
って握りこぶしを作ると、フッて。

やっぱり小さく笑って――
ユキの頭をポンってたたくと。

「おやすみ」

って――。

本当に、ただそれだけのこと
なんだけれど――

ユキ、それがないのは
退院してきてから初めてで
なんだか上手く眠れなくて――。

……

ぐすん。

ユキ、やっぱり――
思い出すと涙が出ちゃうよ。

お兄ちゃん――
ユキ、なんか悪いこと
しちゃったのかな――

ユキは知らなかったんだけど、
霙お姉ちゃんには
ちゃんと連絡があって――

「お友達のお家に泊まってくる」
からって、言ってたんですって。

でもそれなら――
ユキにも教えてくれたら良かったのに。

きっと――
ユキが氷柱お姉ちゃんに
あんまり面倒ばっかりかけるから
いやになっちゃったのかな?

氷柱お姉ちゃんはもうすごい
お姉さんなんだし、もちろんたまには――
お友達とお泊まりだってしたいんだろうなって思うの。

でも、ユキは――

うぅん、きっと氷柱お姉ちゃんは
ユキのためにいままでそういうの
我慢してくれてたのかな――

……

お兄ちゃん――

ユキの涙が止まる方法、
教えて下さい――