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名前: hubuki
2010年5月12日 (水)
シード

春の盛りの間に――
あちこちの道ばたに
大きな花を咲かせていた、
真っ黄色のたんぽぽの花が。

今やみな丸々と真っ白く、
大きな綿ぼうしになって――

青空や虹子やさくらや――
小さな妹たちが毎日喜んで
遊んでいます。

まだ暖かくなりきらない
この春のうちにも。

いよいよ種まきの季節がやってきました。

学校では夏に向けて
低学年による朝顔の
種まきがありましたし――。

そして庭のタンポポのおかげで、
この家の中には、
あの子たちが吹き飛ばした
小さなタンポポの綿毛が
いっぱい舞い込んできて――

ほら。

気づくと、こんなふうに――
私の髪の毛に1つ、
こっそりと隠れるように
くっついていたりします。

だから家の近くで綿毛を吹くのは
やめた方が良いといったのに。

種子は、自力での
移動手段植を持たない植物が――
生存範囲を広げる手段として
獲得した貴重な散布体です。

そしてよくたとえられる受精卵、
というよりは――どちらかというと
もう赤ちゃんに近い生き物です。

それがこんな風に――

生存域を広げるはずもない
屋内などに人為的に
まかれてしまうのは――

まったくの――ロス。
エネルギーの無駄と
いうことになりますから。

それなのにいくら言っても
あの子達は止めなくて――。

それにだいたい私はこのような
隙間に入り込む小さな物に
弱いのに――

……

種子を見ると思います。

有性生殖の産物である
この小さな生き物にはやはり――
お父さんとお母さんがいるのだな、と。

おしべとめしべがくっついて――

フフフ。

もしも人間が種子で産まれて
くることができたなら、

私とキミは――

この同じたんぽぽの綿ぼうしの住人
ということになったのかもしれませんね――