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名前: hikaru
2011年2月24日 (木)
思春期

灰色の空から――

しとしと、と。

ひっそり音も立てずに――

降っているのか
降っていないのか
わからないような――

やる気のない雨。

傘をさす気にも
なれなくて――

両手をポケットに
入れたまま――

トボトボ歩いていると、
むき出しの頬に当たる、

その雨粒の意外な冷たさが――

私の視線を空へと誘う。

曇った薄灰色の空。

他にすることもない
閑にあかせて――

道の真ん中に立ち止まった
私は――

ぐいっと大きく。
顔を仰向ける。

曖昧な空を見上げて
不思議に思うのは――

重たく湿っているはずの空が――
どこか明るく白く輝いて見えること。

さわやかな甘い空気が――
どこか遠くの方から――

漂ってくる気がする。

薄甘い花の香り……

私は目をつぶる。

私の知らないどこか、
遠い国からやってくる――

不思議な風。

薄荷のようなさわやかな香りが
身体に満ちるように――

私はぎゅっと目をつぶる。

時折思い出したように
顔にぶつかってくる雨粒。

ひんやりと私の肌を濡らす。

ああ――

春が来る。

何かが――

私の中で動き出す
気配がする。

オマエへと向かう――
花色の何かが。