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名前: mituki
2011年7月27日 (水)
夏闇

夏の闇は――

短くて――
太い。

そして濃い。

また今年もやってくる
盆をひかえた親月の――

真っ黒に光る射干玉の――

闇。

夏の夜の闇の底――

そっと手を伸ばせば
まるでこの掌に
取れそうなほどに――

たしかに感じられる
濃密ななにかの気配。

指先でそっと触れるか
触れぬかのうちに――
弾けてしまいそうなほどに。

満ち満ちて怪しく
うごめく無数の熱い
モノノケたちの気が――

わらわのこの――
ヘソの下、

丹田のあたりから――

ざわざわと。

流れ込んでくるのを
今宵は感じる。

生あるものも、
生なきものも。

それは――

ふと、気を抜けば――
この体を乗っ取られそうなほどに
確かに強く濃密で――

ああ――

このままでは、今宵――

わらわはこの身のうちに
得体の知れぬ何ものかを――

孕んでしまうやもしれぬ!!

兄じゃよ――

今宵のわらわはアブナイぞよ。

どうか――
わらわを守ってたもれ。

今宵はずーっとそばにいて、
わらわの五体を守ってたもれ。

この夏闇わらわの身を守るもの、
それこそはきっと兄じゃの――

愛じゃ♥