風邪を引くのは――

運命なのだ♥

それは――
この遙かな宇宙のどこか、
無数に存在する恒星のうちで、
時に常に――

爆発し燃え上がる
星があるように。

ウィルスは――
この無数に存在する
我々人類の中で――
不意に１人を選び、
爆発的に増殖する。

それはひとたび増殖が
開始されれば――

誰も逃れることの
できない――

まごう方なき、
運命なのだ♥

フフ。

運命の女、立夏
というわけだな。

ああ、うらやましいなあ、
立夏のヤツ！

運命に選ばれたがゆえに――
今日はまるごと１日。

のんびりと――
上げ膳据え膳で、
なにか手伝いなど
する必要もなく――

このせっぱ詰まった時期に――

夏休みの宿題をする必要もない。

……

フフ。

最高だな♥

一時の解放だ。

オマエは知っているか？
あの快感を。

夏休みも終了間際になって、
日記にドリル、自由研究に作文――

全部すっかり気持ちよく
放置していたあの宿題の山に
いくらなんでも、もういよいよ――
そろそろなんとかして取りかからないと――

これはやっぱりどう考えても終わらないな。
いや、でも本当はもうギリギリダメかもな、
なんて思いながら――
重い腰を上げたとたんに――

風邪を引いて合法的に
動けなくなる――あの快感を♪

まるで崖に向かって
まっしぐらに走っていく
チキンレースのように――

フフフ。

その快感を今年は立夏にさらわれるとは――

これは世代交代の夏かな。

きっと私の宇宙はもうすぐ
静かに縮んで収束を迎えるのだ――