台風、
嵐、
野分――

雷土、
陽炎、
霞、
東風――

涼風、
時雨、
風花――

そして――

枯野に
雪崩――

……

これがなんだか
わかるかな？

オマエは我が家の
長男なのだから――
わかって当然。

わからなかったら
家出ものだな。

――そう。

もちろん、
これらはみな――

私たちの名前の候補

――だった者たちだ。

惜しくも採用とは
ならずにみな――

歴史の陰に流れ去り
宇宙のもくずと
消え果ててしまったが――

まあ。

いくらなんでも――
雪崩はないよな？

そんな非常識な名前、
私だってつけないぞ。

オマエは――どう思う？

だいたい――

氷柱に吹雪に
霙だって――

相当なものだと思うのに。

フフフ――♥

まあ季節や天候にちなんだ
名前を付けようっていう
意図はわかるけれど――

そのルールの下で
20人も子供をもつ
っていうほうが無茶だったな。

でも今でもたまに思うんだ。

もし、あさひの下に
もう１人生まれたら
どんな名前が付けられるのだろう？
まだ私たちに新たな名前の余地は――
残っているのだろうか、と。

私の推薦はもう決まってる。

宇宙。

どうだ、これほど美しい名前は
この世に２つとないだろろう？

オマエはなにか思いついたか？

うん。
名付けとはなかなか楽しいものだな♥

もし私が将来子供を持つなら――
オマエに名前を付けさせてやろう。

なに、父として当然の権利だ、
受け取っておけ――

フフフ♥