カチャリ――

ノックはしないで――
そっと。

細く――ドアを開けます。

まだ――

薄白い朝の陽の光も
弱々しい静かな朝。

家の中もシンとして――

まだ誰も部屋から
出てきている様子は
ないみたい。

よかった――♥

そんな中を――
こっそり。

まるでドロボウさん
みたいに――

ぬきあし、
さしあし、

しのびあし――

ドアの隙間からからだを
部屋に滑り込ませます。

お兄ちゃんは――
まだ寝ているかしら？

今日のこの日に、
１番最初に――

お兄ちゃんに
会いたくて。

どうしても――
まだ手つかずの――
お兄ちゃんに。

誰よりも先に１番最初の
バレンタインの告白を――
どうしてもどうしても、

したくて。

こんな時間に来ちゃった♥

ウフフッ♥

見ちゃった――♥

平和な寝顔を見せて
眠っているお兄ちゃん

やっぱり――
いつ見てもうれしい
優しい大好きな顔♥

あーあ、もう！

こんな風にしてたら――
ガマンできなくなっちゃう!!

本当に本当に――
このまま早い者勝ちで――

お兄ちゃんを自分のものに
できちゃったらいいのに!!!

……

でもそんなわけにはいかないから――

今日はコレでがまん、かな♥

エへへッ☆

早起きのごほうびに、
これくらいは――

私にくれるよね？
お兄ちゃん♥

こっそり内緒の秘密の――

――チュッ♥♥♥

やん、ホントにしちゃった♪

今ごろ夢の中で――
私とキスしてるかな☆

どぉ―――んっ!!!

おっはよー!!

おーいっ、朝だよぉ～！

朝のマホウがやってきたよ！

おにーちゃーんっ☆

エへへへッ♥

おめめ覚めた？

お兄ちゃんのおめめをさます
ミラクルマホウ使い、

魔女っこゆうなだじょ♪

お兄ちゃん、もうそろそろ
おっきしないとダメですよ～♥

今日はね――
今日はね――
今日はね――

なんていったってっ!!

クフフフフゥ――☆

あのね――お兄ちゃん、
今日っていったい何の日か、
知ってたぁ？

１：魔女っこゆうなの誕生日！

２：魔女っこゆうなの初めてのマホウ記念日！

３：魔女っこゆうなの史上最大暗黒マホウ成就予定日!!

さて、正解はどれでしょー？

チッチッチ――

ブーッ!!

残念、お兄ちゃん、不正解☆

今日は、なんとなんとなんとぉ――!!!

バレンタインデーなんだよぉっ!!!

じゃんじゃじゃーんっ♪

１年に１回女の子が――
大好きな人に告白できちゃう、
ナチュラルマジカルの日なのだっ♥♥♥

こーんな日は夕凪の特別マホウは
も、ぜーんぜんいらないねっ♪

だから――今日は
夕凪の大好きなお兄ちゃんに

お目ざめの――チューで愛の告白♪

チュチュチュのチューゥッと♥♥♥

夕凪のキッスのあらしで――
お兄ちゃんのおめめバッチリ
さめちゃえ～☆♪♯♥

あ、お――

……

おはよう。

もう、学校に行く
時間だな――

うん。

今年も学校で起こるかもしれない
女子たちからのチョコ攻撃のことを
考えると――

ああ、もう本当に私は
女だっていうのに、
なんでみんな私にチョコを
持ってくるんだ！！

そう思うと――

やっぱり、ちょっと――
気が重いけど。

まあ、バレンタインが来るのは
いつものことだし。仕方ない。

それよりも――
オマエは、今朝は――
スッキリ目が覚めたか？

朝のジョギングを終えて
帰ってきたら――

なんだかお前の部屋の
あたりから人の気配がして――

なにかあったのかと少し
心配したけれど――

……

その様子だと、元気そうだな♥

フフッ、よかった。

なんだかオマエその――
悩みのなさそうな顔を見てると

私はなんでかいつも――
元気がでてくるんだ♥

それでなんかいろんなことが
どうでもよくなって――

気が軽くなる♥

何はともあれ――
オマエがこうして――

目の前にいるんだから
それでいいかって――

そんな気がして、さ。

そうだ――

オマエ、今日はここから私と一緒に――
腕を組んで学校に行かないか？

オマエと一緒に歩いていれば――

他の女子からのチョコレート攻撃を
避けられるかもしれない！

――うん♥

そうだよ、なんで今まで
思いつかなかったんだろう、
こんなにいいアイデア――

よし、それではさっそく――

フフッ♥♥

こんな風に――腕を組んだら、
カップルみたいに見えるのかな？

本当はキョウダイなのに☆

こんな風にイタズラで――
ほほにキスとか――してみたら、
ますます誤解されるのかな？

よぅし、いいぞ♥

これで当分――
面倒な目に合わないですむな♥

チュゥッ♪

ウワアアアン!!

どーしよ――！

いないいないいないヨォ～～～!!!!

立夏ったら、立夏ったら、立夏ったら――

こんなダイジな日にカギッテ――

ネボウして――

オニーチャンを見失っちゃったヨ！

トホホホホホ……

やっぱし、モウ行っちゃったのかナァ？

そうだよネ。

もう、８時過ぎてるもんネ。

しょぼん。

こんなことなら――
昨日、失敗作のチョコレート
あんなに食べるんじゃナカッタ――

チョコレートって頭がすっきりして
カシコクなるっていうから――

どんなにカシコイ立夏になるかって
キタイしてたのに――

ナンカどんどん目が
サエていったダケで――

も――ギンギン♪

イケナイことイッパイ
考えてるウチに――

気がついたら、いつの間にか
朝に――なってたヨ。

モーニンッ♪

……

なんて言っても――

もう、オニーチャンはここにはイナイ――

ってか、もうこれじゃあ、リカ
完全に学校にチコクだし!!

ウワ―――ン、ウワワワワンッ!!

ダメだ、ここでくじけちゃ
リッカじゃない～!!!

これからフルパワー＆
ターボチャージ全開の
スーパーリカちゃんになって――
オニーチャンをオカケルのダ！

オニーチャン～！

遠く離れたこのバショから!!

リカのＭＡＸラヴの
ジョーネツ☆キッスを
オクリマス!!!

一切ゼッタイ返品不可！

リカの想いはこの空を飛んで――
遠いオニーチャンの顔面にサクレツ！

そのクチビルをふさいで
ホカの誰からもプロテクトしちゃうのダ♥

ぶっちゅううううううう♥♥♥♥

トドケッ！

リカの想い♥

さくらはようちえん、
きらい。

だって、ようちえんは――

こわいもの。

うええええん――

かんがえただけで――
さくらないちゃうの。

だって――

おきょうしつに１人で
いくのはこわいし。

おすなばであそぶと
パンツがすなだらけになるし。

おトイレはなんだかすうって、
すいこまれそうだし――

あと――

あと、あと、
おにだってくるし。

うわああああああ――ん！

やだやだ、やだよぅ。

さくらようちえん、
いきたくないよ……

さくらは、おうちがいちばん好き。

だって――おうちには。

お兄ちゃんがいてくれるもの♥

さくらはお兄ちゃんといると
世界でいちばんあんしん、しあわせ♥

うれしくなったら、お兄ちゃんに
チューってするの♪

お兄ちゃん、だいだいだーいすきっ!!

だから――

お兄ちゃんとはなれたら
さみしくてさみしくて――

さくら――
きっとしんじゃうとおもう。

う、うぅ――

……

ぷるぷるっ。

あ―――

……

……

う、う、うわあああああん!!!

さくらのパンツ――

……

お兄ちゃん、さくらのこと
おむかえにきて――!!!!!

あっばー！
うんばっば♥

にゃーにゃにゃにゃにゃにゃにゃ♥♥♥

きゃ――クスクスクスクス☆

ちゃろっぱくっぱっぱまお――

はにゃっちゃ？

ばっばおばばっば！

うきうき――
おひるごはん♥

おにいちゃんも――
おひるごはん？

おにいちゃんの――
おひるごはんは
なぁに？

おにぎり？

ちゅるちゅる？

ハンバーガ？

にじちゃんはねぇ――

おべんとう！

たまごさんとそぼろさんの
おべんとさん♥

おいしいよ！

エへへへ♥

そぼろごはん、
スプーンでたべるの、

にじちゃんだーいすき♥

にじちゃんね、
おはしより――
スプンがじょうずなの♥

おにいちゃんにも――
あーんってしてあげるの。

とーってもじょうず♥

きっとおにいちゃん
びっくりしちゃうよ

クスクスクス♥

もしこぼしたら――
にじちゃんがぴって。

たべてあげるから
だいじょうぶ！

おくちのはしっこに
ぽろぽろそぼろさん、
ついてたら――

にじちゃんがチュッてして――

ペロペロ♥

とってあげるの！

ふわぁぁぁぁぁ――

……

ふわぁあん。

ねむ――

ねむねむ――

そら、おねむさん！

おなかぽんぽこ
おねむさん♥

おひさまぽかぽか
おねむさん！

おふとんどこ？

おねむのじかん。

そら、ねむねむ。

いいこでねんねする。

おにいちゃんのおせなか
ないかな？

そら、おにいちゃんの
おせなかすき！

あったかおんぶで――
ゆらゆら♥

おねむしたい♥

おにいちゃんのおせなか
いいきもち――

そら、おにいちゃんに
ちゅうちゅうするよ！

おにいちゃんのおせなか――

よだれだらけ！

えへへ♥

そらのよだればくだん
おにいちゃんに――

どっかんぼん♪

おにいちゃん、
どこどこどこ――？

そら、おにいちゃんの
おせなかさがす！

おにいちゃん、
いつかえってくる？

そら、おにいちゃん、
じーってじーって
いいこでまってるよ――

……

――ぐぅ。

たっだいま――♪

聖なる恋人たちのバレンタインデーに
偉大なる王妃様のお帰りよ？

誰か、出迎えのものはおらぬの――

……

あら？

なんでこんなところに
ポテッと小さな青空ちゃんが
丸まって落ちて――

――じゃなかった、

眠りこけてるわけ？

玄関さきで――お昼寝中？

まったくもう――

こんなところで寝てたら
風邪ひいちゃうじゃない！

お昼寝部屋に移動させないと――
よっこらしょ♪ っと。

ああ、でも――
なんかこうしてみると――

かーわいい♥

すっごく気持ち
よさそうな寝顔よね♥

なにかいい夢でも見てるのかしら？

いいわね、ちびっこは
何の悩みもなくぐっすり眠れて――

それに比べたらマリーなんて
もう悩みが多すぎて多すぎて――

もう、お昼寝なんて
全然してられない
お年頃になってしまったわ！

ああ――月日のたつのは
早いものね、フェルゼン!!

私も来年はいよいよ
小学生――

もう芦田愛菜ちゃんには
負けてられないんだからっ！

なんて――ウフフ♥

いいえ、安心して、
フェルゼン♥

もちろん――
マリーは芸能界になんて
全然興味はないわ♪

ええ、もちろんこの
マリーのことですもの、
街を歩けばすぐに
スカウトされまくり！
でしょうけど――でも――

でも――マリーが興味あるのは
ただただ愛しい――あなただけなの♥

フェルゼン♥♥♥

マリーはいつでもいつまでも
あなただけの永遠の恋人。

だから――永遠にフェルゼンも
私のものよ？

その誓いのしるしに――
マリーにキスを許してさしあげるわ。

あ、言っておくけど、
手にするのはナシよ？
ほっぺも――小鳥のキスもナシ!!

そんなコドモダマシなふりはもうやめて――
そろそろ本当の本気の――

キスを♥♥♥

さっ、いいわよ、思いっきり
やってちょうだい！

マリー、１度本当のキスって
してみたかったんだから☆

チュゥ～～♥♥

ただいま――
帰りました。

今日は５時間授業。

終わって帰ると
ちょうどこのくらいの
時間のはずなのですが――

なぜ、夕凪姉たちは
まだ帰ってきていない
のでしょうか？

またどこかで――
道草を？

どこかで雨に濡れて
風邪をひかないと
いいのですが――。

今日は――

久しぶりに雨が降って
体育の授業がなくなり
国語に代わりました。

私は――

体育の授業が少し
苦手なので――

なかなかうれしい
出来事でした♥

今日はいい日です。

フフ――。

それにしても――
今日の学校はなぜか。

どこかそわそわとした
緊迫の空気が流れて
いたように思うのですが――

それは私の気のせい
でしょうか？

見てください、
この私の皮膚も――
どこかピリピリとして、
感度が上がり――

まるでこの冷たい
空気中を漂う小さな電荷を
感じとっているような――

湿度の高い日は
静電気もそんなに
発生しないはずなのですが――

不思議ですね。

ああ、もしかしたら――
今日の小雨で空気中に
マイナスイオンが
増えているのでしょうか？

だとしたら導体である私の身体も
完全に帯電して――

――フフ。

今私に触れたら――
キミまで通電するかもしれませんね。

以前から思っていたのですが、
私の身体はどうも他人よりも
帯電量が多いようで――

ときおりひときわ大きな
静電気の火花を散らす
ことあるのです。

ならば――キミと実験です！

より身体の湿った部分同士を
ぴったりと密着させて――

接合します♥

するとたちまち通電して――

……

ああああっ♥

実験成功。

私はもうこのまま
ショートしてしまいそ――

――う――

で――

……

ハッピーバレンタイン！

お兄ちゃんっ♥

ウフフッ――

今日は待ちに待った
バレンタインデーですね♪

お兄ちゃんは
今日は――

もうたっくさんチョコレート
もらっちゃいましたか？

ユキのお兄ちゃんは、
とってもとっても
かっこいいから――

きっとたくさん
もらったんだろうな――

学校で――告白、
されたりとか――

……

エへへ☆

ごめなんさい。

ちょっぴり――
やきもちユキちゃんです♥

だって――

お兄ちゃんのまわりには
きっと大人っぽいすてきな
オネエサンたちが
たくさんいて――

そういう人たちに
チョコもらったら――

きっとユキからのチョコなんて
子どもっぽくて、ぜんぜん
嬉しくないんじゃないかなって――

そう思っちゃうんだもん！

今年のユキの――チョコ。

先週は少し風邪気味で
あんまり準備とかできなくて――

デコポッキーになっちゃった。

でも、でもでも――

お兄ちゃんに大好きの
気持ちを伝えたくて――

一生懸命デコしたから――

お兄ちゃん食べてくれたら
うれしいです♥

ユキも作っている途中で
失敗作を何本か味見したけれど――

ポッキーってやっぱり
とってもおいしいね♪

お兄ちゃん、はいあーん♥

あ――

おいしそう♥

ユキも反対側からポリポリって
かじっちゃってもいいですか？

ポリポリポリ――

チュッ。

あ、チューしちゃった♥

エヘヘ☆

あっ♥

発見！

春風の世界一大切な大切な――

王子様♥♥♥

――るんっ♪

あーん、見つけちゃった～、
でも、どうしましょう――

本当はもっともっと――
遅い時間に――

夜も更けて――
月も出て――

チョコレートの妖しい
ビターな香りに包まれて、
もう２人どうにもならない
止まらない感じに
なっちゃってから――♥

出会ってアレコレいろいろ
するはずだったのに――

――きゅんっ♥

こんなに春風の出番が
早いなんて――

ちょっぴり誤算です……

ちょうどこれから夕ご飯の
支度もしなくちゃいけない
ところだし――

せっかくこうして、
バレンタインの日に
王子様と２人っきりになったのに
それがうっかりのフリして倒れこむ
ベッドもない廊下でだなんて――

そんなの――
そんなの――

あんまりです！
神様～!!!

春風、そんなに――
こんな罰をあたえられるような
イケナイ子だったのでしょうか？

うぅん、そんなことないです。

今だってこうして――
両手でお鍋を持って
みんなのために家事にいそしむ
春風ですもの♥

そんな春風を――少しでも
気にしてくれるなら――

さ、王子様♥

今なら誰も見てないですから――
ここでご褒美のチュ♥ を春風に
くださっていいんですよ♪

ほら、春風はいつでも――
目をつむって待ってます♥

きゃーん♥

早く早く、早く来て――
王子様♥

春風はもう――ドキドキ、
緊張、胸キュン、噴火で
ああもう死にそうに胸が――

……

ダメ。

春風はもう待っている間に
キュンキュンしすぎて――
胸がつらいから♥

春風の方からいっきます！

王子様――愛してます♥

春風のバレンタインキッス――

チュチュチュのチュウ～～♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥

やや。

兄じゃか――

今日は嫌な雨が降っておるの。

果たしてこれは――

この逢魔ガ時の飛び交う
魑魅魍魎どもに――

水気を浴びせて活かす
常闇の水か――

それとも陰に蠢くものどもを
隈なく祓う浄めの水か――

果たしてどちらであろうかの。

今日は２月の14日。

今日のこの日に満ちる
人々の気は――

神々しくもあり、また
禍々しくもあり――

良くも悪くもさまざまな
活気に満ちておる。

その様をこうして――
外に出て。

丘の上から眺めておると――

なぜだか――

わらわにも不思議な気が
満ちてくる――

様な気がする。

濁った土くれのような色の
渦巻きが熱く艶々しくとろけて
わが身の内に入り込み、

轟轟と音を立てて我が魂魄に
満ちてゆく――

ん？

これはもしや――

チョコレートの――？

フフ――

チョコレートとはただの
童向きの菓子かと思うて
おったが――

これでなかなかに
力を持っておるものなのじゃな。

ちと――
夕食前のつまみ食いが
過ぎたのやもしれぬ。

と、いうわけで――
兄じゃよ、そろそろ
夕餉の時刻じゃ！

姉じゃに言われて――
わらわが呼びに参じた。

しかし、その前に――

今や――わらわの内側に渦巻く
この甘く茶色き力を――

兄じゃにもわけてしんぜよう♥

ほれ、口を出すがよい。

もっと――
もっとじゃ！

ぶっちゅぅ～～♥

……

フフ、甘いか？

口の端にチョコが
ついてしまったぞ♥

みなさん、
お席につきましたか？

それでは――
みんな一緒に姿勢を正して――

お兄ちゃんに、
いっきますよぉ――

敬愛するわがご主君様の
健康と幸せを祈って――

「ハッピー・バレンタイン！
アンド――

いただきますっ♥」

エへへへへ――☆

なんかちょっぴり
カタかった、でしょうか？

なんか――星花がこんな
記念日のアイサツ役なんて

なんだかやっぱり
ちょっと緊張しちゃって――

エへへへ♥

でも、自分から志願して
やったんだし――

いくら楽しいバレンタインとはいえ
何事もちゃんとケジメはつけないと!!
と思って――

一応、ゴアイサツさせて
いただきましたっ♥

今夜のハッピーバレンタイン
メニューは――

蛍お姉ちゃんと
春風お姉ちゃんの力作、
チョコ中華♥

チョコ焼豚やチョコたまご
などの各種前菜に――
チョコ飲茶の点心各種、

チョコふかひれのスープに
チョコ入り北京ダック、

そしてメインディッシュは――
みんな大好き、エビのチリソース――
じゃなくってチョコソースと、
マーボーチョコナス♥

――う、うん。

好き嫌いはいけないですものね、
やっぱり――☆

甘いか辛いか――わからないけど、
どうぞ、お兄ちゃん様、
たくさん召し上がってくださいね！

そして――
最後のデザートはッ――

じゃんじゃじゃーんっ♪

星花と夕凪ちゃんの担当した
超ビッグスペシャルな――
チョコエッグツリー♥♥♥

見てみて、これチョコエッグで
話題の東京スカイツリーの形を
作ってみたんです――

その大きさなんと１ｍ超え!!

夕凪ちゃんがこのアイデアを
思いついて――

２人で一生懸命アルバイトして
チョコエッグを集めたの！

さあ、タワー型に積み上げた
このチョコエッグの塔のてっぺんに――

いよいよ最後の１つを積み上げます!!

積み上げたら告白して
いよいよ本番バレンタイン♥

お兄ちゃん、星花のこと支えてて
くださいね――

イスに上って、うーんと背伸びして
あと少し――

よいしょ、よいしょ――
てっぺんに届け、う、う、うーん――

あ、なんか――イスがぐらぐらして
ころびそ――

――ああああああっ!!!

……チュ♥

―――!?!?!?!?

やだ、どうしよ――

バランス崩して転んだ拍子に
お兄ちゃんと――

……し、し、しちゃいましたっ!!♥

トントン♪

お兄ちゃん、すみません――

お風呂のお時間になりました♥

結局今年も――

星花ちゃんたちのチョコエッグの
おかげで――

全身チョコまみれ、ですね。

――クスクス♥

おけがはなかったですか？

夕凪ちゃんは結局あの後――

星花ちゃんとお兄ちゃんが
転んで乗っかっちゃったおかげで、
ただチョコエッグのタワーが
崩れるだけじゃなくて――

全部見事にバラバラの粉々に
割れてしまったチョコエッグの中身を――

ものすごく嬉しそうに
ひろい集めていましたよ♥

エッグの中身はディズニーで――

もちろんあれはお兄ちゃんのための
チョコエッグツリーだったんですけど――

実は中身の方もずいぶん魅力の
夕凪ちゃんの一石二鳥作戦
だったみたいです。

夕凪ちゃんってああ見えて
けっこう――

……

要領がいいですよね♥

いつもどんくさい小雨は本当に
うらやましいです。

お兄ちゃんにビックリするような
個性的な贈り物をして、
それでいてさらに、自分にも
いいことがあるように計画するなんて――

小雨より３つも年下なのに
本当にすごい――

小雨はこのまま大きくなっても
とってもあんなふうには
なれない気がします。

夕凪ちゃんは明るいし元気だし
マホウも使えるし――

きっとああいう女の子が
男の人に好かれるんでしょうね……

小雨なんて全然正反対のタイプです。

しょんぼり。

だから――

小雨は――お兄ちゃんのことが大好きでも、
お兄ちゃんに好きになってほしいとか――

そんな大それたことは思いません。

でも、今ただ――１つ
よかったなって思うのは――

小雨はお兄ちゃんの妹だから
別に好きとか嫌いとか関係なく――

お兄ちゃんのそばにいられる
っていうことです♥

小雨はお兄ちゃんのことが大好きです！

そんなお兄ちゃんの妹に――
ハッピーバレンタインのキスを――

私にも小さくてほんちょっぴりでいいから――

小さなキスを――おねだりさせてください♥

お願い、小雨がこうして
目をつぶっている間に――

そっとこの頬に――

……

きゃっ♥♥♥

い、いいいい今の――

く、く、お口だった!?

きゃああ――ん♥♥♥♥♥♥

私は――

しないわよ。

絶対絶対、絶対!!!!!

……。

だいたい――

いったい誰なのよ？

こんな――

19連続――

チ、チ、チ、チ、チ――

チュ、チュゥのプレゼントなんて――

考えついたのは!!!!?

いいえ、絶対海晴姉様
じゃあないと思うわ！

あの人は――

そういう楽しいことは
みんなでやろうなんて
思わないで――

さっさと１人で
やりたいタイプ。

でも霙姉様が
言うわけないし、
春風姉様だって
あんなに年中きゅんきゅん
言ってるのに――
今さらもう必要ないだろうし。

ああ――

もう、とにかく迷惑!!

これ考えた人、
ヒトのことなーんも
考えてない!!

だいたい――
なんでバレンタインだからって
みんなで愛の告白だの、
チュウのプレゼントだの――

しなくちゃいけない
っていうわけ!?

バッカみたい!!

バレンタインにチョコレートって
いうだけでも俗っぽいのに
さらにこの上、家族で告白とか
妹にチュウとか――

わけわかんない。

海外では家族でキスするのが
普通とか言わないでよ？

ここは日本で――
近くには働き者の山手線が
夜遅くまで走ってる。

家族でチュウとかそういうのは――

ありえないんだから!!

――フン。

だから――私はもう寝るわ。

このまま――

おやすみ。

……

ただの兄としてなら――

べつにあなたのことが
嫌いなわけじゃないけど。

でもキスとかは――
ちょっとありえない。

わかってくれる？

そう。それなら――

この人差し指を――

そっと小さく私のくちびるに
おしあててから――

しーっ……黙って。

ほら、こうして――

あなたのくちびるに移せば――
これで、間接――

ね？

おやすみなさい。
これで一応約束は守ったわ。

だから後ろめたさもなく――
よい夢が見れそう――

ハッピー・バレンタイン♥

――“お兄ちゃん”。

やあ。

今日も１日お疲れ様だったな♥

もう風呂はすんだか？

それにしても毎年のことだが――

チョコレートよりもあんこが
好きな私としては――

やっぱり思うな。

そろそろ――

バレンタインのギフトに
おはぎとかまんじゅうとか
ようかんとかが――

あってもいいんじゃないかって。

なんだか最近、月餅は
アリらしいけど。

でもあれは――結局
中華モノだからな。

油が入っていたりして
和風のあんことはやはり
ちょっと風味が違う。

――うん♥

というわけで――

風呂上りに１つ、一緒に
あんこ玉をつまむっていうのは
どうだ？

うまいぞ――

風呂上がりのあんこ♥

一応、こうして――
ちゃんと冷やしておくのが
おいしく食べるコツなんだ。

こうよく冷えたつるつる
ムニムニのあんこ玉を――

ぱくっと――

こうして男らしく
一口に食べるッ！

ムグムグ――ごっくん♪

ああ――うまっ♥

牛乳と合わせると最高だな！

こうしていると――
バレンタインもただの
日常の一コマになって――
よりリラックスして味わえる♥

ああ、なんだ――

オマエ、牛乳飲んだら
口の端にヒゲができてるぞ？

――クスクス♥

それじゃあさくらみたいだ――

よし、ここは霙おねえちゃんが――
姉としてちゃあんとふき取ってあげよう。

ペロペローリ♥♥

フフ――♥♥♥

なんだ、そんなにのけぞること
ないじゃないか――

よりリラックスしたいなら――

ここからはもう――

大人の時間♥

もっとチガウものを――
ペロペロすることにしても

――いいんだぞ？

クス♥

――あっ。

……

なんで――

こんなところで――

会っちゃうわけ？

今日は１日――

下僕に会わないように、
２人っきりに
ならないようにって――

気をつけてたのに。

こんなところまできて
最後の最後に
会っちゃうなんて――

……

うん、もう寝るとこ。

勉強終わって――
寝る前にちょっと
なにか飲もうかなって
思ってそれで出てきたんだけど――

……

アナタは？

今日は１日みんなに
モッテモテで――
気分良かったんでしょ？

“チュー”だっていっぱい――

したんでしょ？

……

――フン。

よかったわね！

私はべつに――下僕が誰かと
キスするくらい――

全然気にしないわよっ！

私には関係ないもの。

ただ――

ただ、いくらお姉ちゃんが
言うからって、そんな――
他の子たちと一緒になって
バレンタインにお手軽なキスなんて――

私は――

したくないから。

だから――

会わなければそれですむって。

そう思ってただけ。

べつにアナタだって
私とキスなんか――

したくないだろうから
別にいいでしょ？

それとも、まさか――

アナタ――

……

したいわけ？

私と――

キス。

……

フン。

下僕のくせに――
意外と度胸があるのね？

まさか――そのかわいそうな
下僕アタマをかかえて
ご主人様の私に――

キスがしたいなんて！

もう、身の程知らずもいいとこで――

笑っちゃうわ♥

いいわよ、そこまで
言うなら――
アナタの方から
そう言うなら――

試してあげても？

ただし――半端な、へたくそな
キスだったりしたら――

絶対許さないからね？

私の初めての――

本気のキス、なんだから。

バカ――
もう、そんなもじもじしてないで、
早く――

こっちだって恥ずかしいんだから――

……

あ。

ハッピー・バレンタイン！

長かった今日も
ついに――

最後の瞬間が
訪れたわね♥

今年も私達19人の
愛の告白を――

受け取ってくれてありがとう♥

みんなの――キスは♥
甘かった？

それとも――
ちょっぴり酸っぱかったかな？

表現の仕方はそれぞれだけど、
どの子もみんな――

大好きな“お兄ちゃん”へ
愛情いっぱいなことは
間違いないから――

きっとこの19個のキスが
明日からのキミの力に
なってくれると思います☆

こうして１日の終わりに――

私たちはキミに日ごろの気持ちを
伝えることができて――

なんだかほっとしたような♥

でもやっぱり――
終わってしまうのが――
ちょっぴり惜しいような。

どこか不思議な気持ちよ♥

だからそんな――
２つの気持ちが入り乱れて――

ワクワクの余韻が少しだけ
まだ収まらない――

こんな夜更けには。

やっぱり――大人同士で♥

イイコトするのが――

１番いいって思わなぁい？

ウフフッ――♥

みんなの――18通りの
キスにも負けない――

ステキなステキな
お姉ちゃんだけの裏技――

海晴スペシャル☆ をこれから
してあげてもいいかなって
思ってるんだけど――

私のかわいい弟くんは
それに耐えられる自信が
あるかしら♪

あら――これは
抜け駆けなんかじゃないのよ？

ほら、だって――

ちびちゃんたちまで
みんな――１人前に♥

女の子としてキミに
大好きのしるしのキスを
あげたのに――

１番年上のお姉ちゃんが――
みんなとまるっきり
同レベルっていうんじゃ――

逆にカッコがつかないじゃない？

ねぇ、どう？

海晴スペシャル♥

覚悟はできてる？

ひざまくらで耳かきか、
それとも背中に胸を
押しつけながらの肩もみか――

あ、それともやっぱり――

お姉ちゃんの胸元で
むにゃむにゃ赤ちゃんに
なってみるとか――

ウフフフフッ♥♥

大丈夫♥

まだまだ夜は長いのよ――
これから２人でゆっくり
相談しましょ♥♥

大丈夫、もう誰も来ないから。

何をしたって――
誰にも秘密よ♪

キミに海晴のスペシャルな
キスをあ・げ・る♪

――チュッ♥